二代目 竹内久勝の掟


二代目竹内久勝(1567~1663)は,父竹内久盛(1503〜1595)の意志 を継ぎ, 入門者のために 「竹内流掟」を定めた。

久勝は1589〜1596の8年間、武者修行した後、角石谷に戻り、武芸伝授に専念した。後に、京都の西山に道場を開いて3年目の1620年に後水尾天皇や関白近衛信尋に演武を上覧し、「日下捕手開山」の称号を得て、角石谷に戻り門人の育成に努め、この頃に「竹内流の掟」を定めた。

久勝は門弟達を身分で別け隔てするようなことをいっさいせず、武士も農民も町人も平等に扱った。竹内流を学ぶ者はすべて愛宕神の信徒であり、神の前には皆平等であるという信念を貫いた。竹内流の流儀の規範である『竹内流門人掟之事』が示すように、その掟のもとに門人はすべて平等であった。

「掟 」

一、師命の儀,相背き申しまじき事

一、公儀御法度の類,その他放将の噺,
       他流誹諦しまじき事

一、議論,舌戦しまじき事 

一、稽古,粗略しまじき事

一、高弟は,初心の粗略なく,懇々取立
      て出精致すべき事

一、初心も高弟も同様に存ずべき事

一 、当稽古上の次第修行の善悪,並に
       相弟子,名指器用不器用,改札の趣,
       他耳物語,申しまじき事

一 、他人に師を名乗り,あるいは型を
        試す事 重々有まじき事

一、相弟子互に相慎み,仲良く出精仕る
       可き事 

一 、稽古篇数相済候 面面早速退散の
        事

以上,十一ケ条の「掟」があり,この 「掟」に従わない者は破門となった。

この「掟」の特徴には,竹内流を修行する者は,階級が如何なる者であろうと,社会的地位があろうと,それらにまっ たく関係なく,高弟も初心者指導には粗略を許さず,門人相互に礼儀をただし,仲良く励まし有って精出すべきことが,説かれている。また入門を許す際にも「厳しく人柄を選び,興味半分や, 喧嘩の道具に入門を希望する者には絶対に許可」しなかった。たとえ入門を許しても,精神のゆるみを防ぐため「神文誓書」を差し出させ,誓書に反するようなことがあれば,容赦なく破門を申し渡している。こうした厳しい戒律の中で,門弟たちは精神,技量ともに成長したのであり,この戒律こそ、流派成立及び存続発展に欠かせないものであった。

久勝は,同時に『竹内流心要歌』を作 り,歌でもって,門人たちに竹内流の精神を伝えた。この歌は五十九首から成立ち,孔子や孟子の説を引きながら,
第一首において

 「兵法の極意に仁義礼智 信たえずたしなみ気遣をせよ」

と記され当流では儒教の仁義礼智信の徳が大切であることを説いている。
また、

「忠は天,技は地也と心得よ。忠を生ずる技と知るべし」

と記され切り倒し組み伏せる技はみな忠孝を立てんがための手段であると説いている。そして

「義理深き人と思えば 兵法の,極意残さず教え伝えよ」

と記し,いかに仁義の備わった武士を作ろうとしていたかが窺える。一方,兵法修練の際の心構えとしては

 「兵法は叶わぬ折の身のためと,心にかけて稽古よくせよ」

と 記され,必死の場に至っては誰も助けてくれない故,日頃から真剣に稽古に励めと論している。また

「兵法の極意に心至りなば,刀道具に及ばざりけり」

とも記し,また敵の打太刀を見るとそこに心が留まってしまうから,卒度も止めずに戦う心が必要だ,とも説いている。同様に

「心をば,有る物にして無きものよ,有無の二っは修行なりけり」

とも記され無心の境地を求めて,修行にはげむように説か れている。ここには沢庵の

「向こうから切りかかって来る太刀を一目見て,そ のままそこに太刀を合わせようと思え ば,相手の太刀に心が止まって,向こうから切られるのです 。これを心が止まると申します」

と言った,禅の影響が見られる。又,兵法の向上に関しては 

「花は花,紅葉はもみじ,そのままに云 うて教える,以心伝心」

とも記されただ心をもって心に伝えるだけだ,という禅の以心伝心を極意としている。

兵法に関しては、竹中半兵衛重治(晴)(1544-1579)の弟・竹中久作重明(矩)(1546-1582)あるいは嫡子・竹中重門(1573-1631)から竹中流兵法書を授かっている。

このように,久勝は「掟」を定めるとともに兵法歌により,門人の精神的教化を図っていったものと思われる。

東京 竹内流備中伝 Tokyo takenouchi ryu Bitchuden

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