備中竹内流の防犯、護身の発想 31.3.29
ある人から防犯に関する相談を受けた。一般人が出入りする教室に併設された会社の会計係が手薄になる場合があるため、防犯の工夫や女性職員の護身についてアドバイスはないかと。防犯カメラや入退出システムなどの設備投資は予算制約から難しいという。
防犯や護身の基本は9割以上は日頃の心掛け。危ない環境や場所、危ない時間帯、危なそうな人を「避ける」「離れる」「距離を取る」心掛けがあれば、リスクを回避する可能性がかなり高まる。
また、武術の稽古をした経験があったり、護身具や武器の扱いに心得があるからといって、身体や武器を頼りに解決の糸口を見いだすことに固執すると返って我が身や周囲の人々や相手の身も危うくする場合があることに留意する必要がある。
また、普段から身体を動かす事も少ない人に、にわか仕込みで護身技を教えたとしても、つかまれた手などを振り解いて、相手から離れるといった「手ほどき」以外の護身技は、たやすく使えない事を当事者や初心に返って考える必要がある。
「生兵法は怪我のもと」という諺は
その通りであり、武術を稽古している人も含めて、普段からの備えに思考や神経を巡らしておき、身体を使うのは最後の最後と考えておくくらいの用心深さで丁度いい。
強盗の目的が金品であれば、少額の金を渡して、相手の目的を半ば達成させて気の緩みが出たところで、逃走経路で対処する方法を考えるといった考えが賢明となる場合もある。
養老先生口伝(備中竹内流十四代竹内綱一正取師範(号養老)語録(中山取真作)小野真人編成)という心得がある。
その中に次のようなものがある。
「武具として役立つものは平生 知り置くべし、目立たぬ隅に棒切れを忍ばせ置くは心得なり。」
その一方で、
「家にて武具の置き様心得あるべし、賊来りて武器を奪われるは未熟この上なし。」とある。
例えば、棒切れの代表に
鼻捩(はなねじ)がある。
馬具ではあるが、四半棒、十手、小太刀の代用にもなる。現代では警察官の警棒のイメージに近い。
古来、手槍や刀がわりに(短)棒を玄関などの出入口や柱、鴨居など直ぐに手の届く場所に備えて置くことがあった。
しかし、持ったことも、見るのも初めてという人がこれを手にしても、どう使えばいいのかピンとこないのではなかろうか。
現代の防犯用具、護身具としては、呼び笛やアラーム、閃光ライト、防犯スプレー、カラーボール、スタンガン、刺股(さすまた)などがある。
これらも100均などで代用品はみつかる。例えば、
いずれにせよ、当事者が「これなら使えそう」と思えるような得物や技術でないととっさには使えないことや、個人が身の回りの準備や備えをするだけでなく、周りの人々との連携、連絡、役割分担なども予め決めて置くという段取りや、心の準備をしておくことも重要になる。
そこまで準備しても、想定外の事は常に起こり得るし、自分の手に負えない場合には、逃げる、一時的には相手に従うなどの善後策をとることも頭に入れて置く必要がある。
防犯や護身にも、武術をあてにせず、常の備えと、柔軟な発想を心掛けることが必要になるのはなかろうか。
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