#上久保先生 #コロナ変異種 #AERA #最新情報 2021.2.2
この記事を以下に取りまとめ。
英国発の「変異株」への恐怖が広がるが、実はもっと怖い変異株が他にもある。どんな敵が日本に入り込んでいるのか。データが無いのが真の問題だ。AERA 2021年2月8日号から。
イギリスで猛威を振るう「変異株」。昨年12月にジョンソン首相が「感染力が1.7倍の変異株が流行している」として、翌月にはイングランド全土のロックダウン(都市封鎖)を発表。1月22日には死亡率も高い可能性があると発表し、世界に衝撃が走った。水際対策として政府が年末に海外からの入国を停止した日本でも、イギリスへの渡航経験が無い3人から「変異株」が見つかった静岡県で知事が「緊急警報」を出すなど、不安や危機感が広がる。
イギリス発の変異株は「VOC‐2020 12/01」と名付けられ、南アフリカで見つかった「501Y.V2」とともに世界中の注目を集めている。しかし、中国・武漢発とみられる今回のウイルスが、約1年経って突然この二つに変異したわけではない。世界に蔓延する過程で無数に変異を繰り返し、毒性や感染力を強めたり弱めたりしながら今に至っているのだ。
■変異続ける新型コロナ
「この二つは、感染させる細胞に侵入するためのウイルス粒子の外側のスパイク(突起)に変異がみられますが、スパイクの変異はこの1年で何十も起こっており、ありふれたことです」
ウイルスの変異に詳しい京都大学大学院医学研究科癌創薬イノベーション研究室の上久保靖彦特定教授はこれら二つだけを特別視する日本の状況に疑問を投げかける。上久保教授と、吉備国際大学大学院保健科学研究科・高橋淳教授は共同で、インフルエンザとコロナウイルスの遺伝情報を集積する「鳥インフルエンザ情報共有の国際推進機構(GISAID)」に寄せられた各国のデータを元に新型コロナウイルスの疫学的解析、構造解析を進めてきた。
新型コロナは、頻繁に突然変異を繰り返す「RNAウイルス」と呼ばれるものだ。2人の共同研究によると、変異は100以上あるが、そのうち2020年11月までに疫学的に重要な影響を与えた変異が37個あり、うち6個がスパイク遺伝子の変異だったという。原型といえる「S型」から「K型」、「G型」、「欧米G型」と変異を重ね、多くの型が派生して欧米で感染者を増やしていった。さらに世界に蔓延する過程で、中東由来の「Q型」や南半球で生まれた「N型」も派生している。
また、有病率(人口100万人あたりの症例数)や死亡率(同死亡数)、CFR(新型コロナに罹患した集団の致死率)との比較から、感染性や毒性の強弱などを疫学的に解析した。
その結果、2人は12月5日に出した3本目の共同論文で、疫学的に影響を与えた重要な変異は20年の3月がピークで、5月には既に頭打ちになっていたことを突き止めた。イギリスと南アフリカの変異株も、このときまでに生まれた変異型の一種だという。
「欧米G型はGR型、GH型、GV型などに分岐しました。イギリスの変異型はGR型の系統、南アフリカのものはGH型の系統です。私たちは、ウイルスの毒性は変異前のG型が最も高いことを論文で示しています。現在解析中で未発表ですが、20年秋に始まった欧州でのエピデミックの第2波は、感染性のみが上昇したGV型を含む主に4種類の変異ウイルスによるものと考えています」(上久保教授)
■流入の順番が拡大左右
ここで私たちが理解しなければならないのは、やみくもに、イギリス発の「変異株」だけを怖がっていては感染拡大は防げない、という事実だ。
2人の研究からは、前出の「Q型」と「N型」はともに致死率が高いなど強毒性であることが確認されている。Q型は免疫システムをすり抜ける「免疫回避型」で、N型はスパイク変異で細胞へ侵入しやすい性質を持つ。
Q型はシンガポールや香港で流行し、中国にも侵入している。毒性はさほどでもないが感染力が強く、欧州で第2波を引き起こしたGV型は韓国への侵入が確認されており、すでに日本に来ている可能性が高いという。
年末から水際対策の強化に踏み切った日本政府。上久保教授らはこう話す。
「日本の水際対策は遅すぎました。雨でずぶ濡れになってから傘をさし始めたようなものです」
とはいえ、ウイルスの侵入を許していたとしてもマイナスばかりとは限らない。被害の大小は、ウイルス単体の性質だけでは決まらない面もあるからだ。
昨年3月ごろから欧米で多数の死者を出すなど被害が拡大した原因について、上久保教授は「ウイルスが流入する順番にカギがあった」と分析する。
「日本を含む東アジア、オセアニア、アフリカにはS、K、G型が順番に流入して人々が免疫を獲得していきました。一方、欧米にはK型がほとんど入らずいきなりG型が流行した結果、ウイルスが強毒化したのです」
S型のウイルスに感染し、体内にその特異抗体(非中和抗体)を持つ人がG型に感染すると、体内で抗体依存性感染増強(ADE)という状態が起き、劇症化してしまうことが知られている。だがS型のあとにK型にも感染していれば、K型が免疫システムの一つである「T細胞免疫機能」を強く活性化してくれるため、G型に対しても防波堤として働くのだという。
「東アジアとオセアニアはお互いに観光客や留学生が多数行き来し、アフリカにも多くの中国人労働者が行かれたのに対し、2月に欧米に行かれた中国の方々は少なかったことが、K型が流入しなかった原因とみられます」(上久保教授)
■日本の現状「公開無し」
様々な変異型に対して、日本は今後どのような感染対策をとればいいのか。その前提となるのは「どの変異型が、どの程度流行しているのか」だ。
たとえば、K型で活性化された免疫の持続期間は他のコロナウイルスから推定して約10カ月とみられている。K型の流行から時間が経ち、多くの人の免疫が廃れていれば他の型への備えも弱まる。そこにQ型やN型などが入ってくると急激な感染拡大を引き起こす可能性もある。
だが11月以降、日本からはGISAIDに感染者の検体が提出されておらず、現時点でどんな型のウイルスが入り込んでいるか確かめようがないという。
「データが公開されていないと『可能性』の話しかできず、警告を出せません。国立感染症研究所が英国の専門家のようにデータを解析して警告を出してくれればいいのですが、データを抱え込んでいるだけで国民に公開しないのであれば、税金の無駄遣いになってしまうかもしれません」(上久保教授)
両教授は、日本には様々な変異タイプが十分に入り込み、すでにある種の集団免疫ができている可能性もあると考えている。
2人が根拠として挙げるデータは二つ。一つは、東京理科大学の村上康文教授らが8月に発表した抗体検査の結果だ。
この検査では、10代から80代までのボランティアの被験者362人ほぼ全員の検体から、感染経験があることを示す抗体反応がみられた。陽性の水準に届かなかったとしても、実は大半の人がウイルスに感染していた可能性が高い。
もう一つは、インフルエンザの報告の少なさだ。厚生労働省によると、今シーズンの1月10日までの19週間の累計は全国で664人。過去5シーズンの平均は約35万6千人だから、0・2%にも満たない。これは、前出のとおり新型コロナへの感染で、T細胞などの免疫が活性化した結果と考えられるという。
「インフルエンザの発生率が低いことを『新型コロナの感染予防対策の成果』という人がいますが、(コロナ感染が免疫を活性化させた)『ウイルス干渉』によるものと考える方が自然で、すでに何千万人もが新型コロナに感染済みでも不思議はない。今現在の陽性・陰性を調べるだけではなく、実際にどの程度の人が過去にコロナ感染を経験しているのか、抗体検査のサンプル数を増やすなど科学的に検証を進める必要があります」(上久保教授)
ただ、両教授は、「変異型を元に議論がなされるようになったこと自体は大きな進展」とみる。必要なのは、より多くのデータを元にした、現実的な対策だ。
(編集部・大平誠)
※AERA 2021年2月8日号
ゼロコロナはありえない。
これからもコロナに触れ続けwithコロナ。
『集団免疫は終生免疫(生涯続くもの)ではなく、再感染して免疫をブースト(強化)しなければ、廃れるもの』。
感冒(カゼ)免疫の持続期間は約10か月。
触れ続けることが免疫維持になる。
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